中国市場で本当に怖いのは、「売れないこと」じゃない。

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昔の私は、「売れること」が正義だと思っていた。中国市場は大きい。動けば数字も伸びる。実際、中国では突然商品が爆発的に売れる瞬間がある。ライブ配信一本で在庫が消えることもある。だから多くの企業が中国へ向かい、多くの経営者が「売上」を追いかけ始める。私自身もそうだった。

でも、長く中国市場に関わる中で、ある時から強く感じるようになったことがある。中国市場で本当に怖いのは、“売れないこと”ではなかった。「回収できないこと」だった。

最近、2015年に事実上倒産した 江守グループホールディングス の記事を読み返して、改めてそのことを強く感じた。売上は伸びていた。利益も出ていた。中国事業も拡大していた。外から見ると順調に見えた。しかし実際には、中国取引先からの売掛金回収が滞り、営業キャッシュフローは5年連続マイナス。最後は「売上不足」ではなく、「キャッシュ不足」で崩れた。

これは、中国市場の怖さを象徴していると思う。

中国では、売上が伸びるほど危険になる瞬間がある。

例えば、1年後回収の条件で100億円売れたとする。数字だけ見れば成功に見える。でも実際には、その1年間、メーカーは原材料費、人件費、物流費、広告費を先に払い続けている。つまり、先に自分の体力を削って市場を支えている状態になる。

しかも中国市場は変化が速い。

去年売れていた商品が、今年も売れる保証はない。昨日まで強かった代理店が、突然資金繰り悪化することもある。中国では、「売れた」より、「回収できた」の方がはるかに重要になる瞬間がある。

昔の中国市場では、「まず市場を取る」「まず販路を広げる」という空気が強かった。だから長い支払いサイトを受け入れる。大量在庫を積む。代理店に依存する。

でも、この構造は一度崩れると怖い。

回収が止まった瞬間、会社の中では全部が逆回転を始める。

銀行返済。仕入支払い。社員給与。物流費。広告費。

売上はあるのに、現金だけがない。

これは実際に中国ビジネスで多く起きてきたことだと思う。

しかも最近は、競争がさらに激しくなっている。価格競争、ライブ配信、SNS広告、値引き、流量獲得。全員がアクセルを踏み続けている。

その中で、「売上だけ」を追い続けると、最後に残るのは在庫と売掛だけ、というケースも本当にある。

だから最近、私はSNSや越境ECの重要性を強く感じている。理由はシンプルだ。従来型の代理店モデルと比べ、「販売」と「回収」の距離を短くできるからだ。

以前の中国ビジネスは、誰かに売り、その先で売ってもらい、数ヶ月後に回収するモデルが中心だった。でも今は、抖音(Douyin)、小紅書(RED)、ライブ配信、越境ECを通じて、企業が直接ユーザーと繋がれるようになった。

もちろん簡単ではない。毎日発信が必要だし、広告費もかかる。でも少なくとも、「売れたのに回収できない」という構造からは離れやすい。

最近、中国ブランドを見ていても感じる。彼らは単に商品を売っているわけじゃない。SNS、ライブ、短動画、私域、コミュニティを全部繋げて、「継続的に回収できる仕組み」を作っている。

つまり今、中国市場で必要なのは、商品力だけでも、流量だけでもない。“キャッシュが戻る設計”なんだと思う。

私は今、中国市場を見る時、「どれだけ売れるか」より先に、「どれだけ回収できるか」を見るようになった。

誰に売るのか。どのチャネルを使うのか。どんな条件で取引するのか。キャッシュはいつ戻るのか。

そこまで含めて、初めてビジネスになる。

中国市場は今でも大きなチャンスがある。でも同時に、“売上が伸びること”と、“会社が残ること”は、全く別の話でもある。