
最近、中国市場を見ていて強く感じることがある。
今、中国では「何を売るか」以上に、「どれだけ見られているか」が重要になっている。
以前の中国ECは検索中心だった。価格を比較し、レビューを見て、モール内で購入する。しかし今は違う。抖音(Douyin) を開けば商品が流れてきて、小紅書(RED) を見れば誰かの使用体験が出てくる。気づいた時には、「検索する前に、欲しくなっている」。
つまり中国市場は今、“検索される市場”から、“流れてくる市場”へ変わっている。
ここで苦しくなっているのが、日本企業だ。もちろん、日本製品の品質評価は今でも高い。しかし、それだけでは届かなくなっている。
理由はシンプルで、情報量が違う。
中国ブランドは、毎日大量の動画を出し、ライブ配信をし、インフルエンサーが使い、一般ユーザーも投稿する。商品が止まらず流れ続けている。一方、日本企業はまだ、「良いものを作れば伝わる」という前提から抜け切れていないケースも多い。
しかし今の中国市場は、“良い商品”より、“何度も見かける商品”の方が強い。
例えば、資生堂 は比較的早い段階から中国SNSへの適応を進めていた。単に「日本ブランド」を押し出すだけではなく、成分、肌質、使用感、レビュー、ライブ配信まで、中国ユーザー向けに情報を再設計している。だから中国でも、“理解されるブランド”として残っている。
MUJI も同じだ。単なる雑貨販売ではなく、「どう暮らすか」「どう部屋を整えるか」という生活そのものを発信した。その結果、小紅書では大量のUGCが生まれ、ブランドが自然に拡散していった。
一方で、象印マホービン や 花王 のように、中国市場で高い知名度を持ちながらも、中国ローカルブランドとの競争激化に直面している企業も少なくない。
今の中国では、「品質が良い」だけでは存在感を維持しにくい。どれだけ見かけるか。どれだけ話題になるか。どれだけ日常に入り込めるか。そこまで含めて競争になっている。
最近では、Dreame Technology のように、社員全員にSNS発信を求める企業まで出てきている。企業アカウントだけでは届かない。だから、“人”を増やしている。
ここまで来ると、もうマーケティングというより情報戦に近い。
中国SNS運営で重要なのは、「流量」ではなく「変現設計」
中国SNSで成果を出している企業は、単純に再生数を追っているわけではない。
重要なのは、
・ 誰に見られるのか
・ どこで認知されるのか
・ どう購入につなげるのか
まで最初から設計していることだ。
つまり、中国SNSの本質は「流量競争」ではなく、「変現導線設計」にある。
しかも、中国主要SNSは、それぞれユーザー属性も購買行動も大きく異なる。
そのため、日本企業が中国市場へ進出する際には、「どの商品を、どのSNSで、どの層へ届けるのか」を整理する必要がある。
小紅書(RED)
“欲しくなる空気”を作るプラットフォーム
小紅書は、レビュー・比較・生活提案との相性が非常に強い。
特に、
・ 化粧品
・ 美容家電
・ 収納用品
・ キッチン雑貨
・ 母嬰用品
・ 健康食品
など、「生活改善型商品」が伸びやすい。
例えば、
日本製スキンケア商品の成分比較、
無印収納による部屋改善、
日本キッチン用品の使い勝手紹介などは、小紅書で拡散されやすい。
ここでは、“売る”より、“憧れさせる”ことが重要になる。
抖音(Douyin)
“見た瞬間に理解できる商品”が強い
抖音はスピードが速い。
そのため、
・ ドライヤー
・ 掃除機
・ 調理家電
・ 便利グッズ
・ 健康器具
など、「変化が動画で伝わる商品」と相性が良い。
特に、
・ 使用前後比較
・ 時短効果
・ 掃除実演
・ 収納変化
など、“一瞬で価値が伝わる”コンテンツが強い。
微信视频号
“信頼”と“継続接触”を作る場
视频号は、派手な拡散よりも「継続接触」に強い。
そのため、
・ 健康食品
・ 高単価美容
・ 教育
・ 会員制サービス
・ 日本医療美容関連
など、長期信頼型商材との相性が良い。
特に40代以上ユーザーとの親和性が高く、“私域流量”構築に向いている。
Bilibili
“理解されることで売れる商品”向け
Bilibiliは、知識・比較・レビュー型コンテンツが強い。
例えば、
・ カメラ
・ オーディオ
・ PC周辺機器
・ 高機能家電
など、スペックや技術説明が重要な商材と相性が良い。
単純広告より、「なぜ優れているか」を説明できるブランドが強い。
中国市場で必要なのは、「商品輸出」ではなく「情報設計」
現在の中国市場では、
広告中心 → コンテンツ中心
企業発信 → 個人発信
単発販促 → 継続接触
へと構造が変わっている。
つまり、「良い商品を持っている」だけでは足りない。
どのSNSで認知され、
誰によって語られ、
どのように拡散され、
どこで購入につながるのか。
そこまで含めて設計できる企業が、中国市場で強くなっている。
