象印やサーモスは、なぜ中国で売れなくなったのか。私はその“失速の瞬間”を現場で見てきた。

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私はこの10年以上、中国市場で日本の商品を売ってきました。

その中でも、長く扱ってきたのが保温ボトルです。

象印。
サーモス。

この2つのブランドが、中国で圧倒的に売れていた時代を私は知っています。

当時は本当に強かったです。

「日本製だから安心」
「品質が違う」
「壊れにくい」
「プレゼントに喜ばれる」

中国のお客様は、日本ブランドを強く信頼していました。

正直に言えば、置けば売れる時代 でした。

私自身、その時代に多くの引き合いや注文相談を受けてきました。

でも今、現場にいる私から見ると、はっきり言えます。

あの黄金時代は終わりました。

商品が悪くなったわけではない。売り方が古くなった。

まず誤解してほしくないのは、象印やサーモスの品質が落ちたわけではありません。

むしろ今でも良い商品です。

象印の公開資料では、2025年の売上高は911億円、営業利益74億円。日本国内売上も614億円まで伸びています。

つまり、日本では今も強い。

でも中国売上は54.26億円。前年約77億円から大きく減っています。

この数字が意味するのは一つです。

商品が弱いのではない。
中国市場での勝ち方を失ったのです。

中国メーカーが、日本ブランドを研究し尽くした

10年前、中国ブランドと日本ブランドには明確な差がありました。
  •  保温力
  •  漏れにくさ
  •  軽さ
  •  細かい作り込み

でも今、中国メーカーは全部見て学びました。

そして改善しました。

しかも、
  •  デザインは今っぽい
  •  色展開が早い
  •  SNS映えする
  •  値段は半額前後

こうなると、消費者は冷静です。

品質差が見えないなら、安い方を買う。

これは自然な流れです。

多くの日本企業は、競合に負けたのではない。自分たちの遅さに負けた。

中国市場は速いです。

本当に速い。

昨日流行ったものが、来月には古い。

中国ブランドは、売れればすぐ量産します。
SNSで伸びればすぐ広告を打ちます。
色が流行ればすぐ変えます。

一方、日本企業はどうか。

会議。
稟議。
確認。
本社承認。

その頃には市場が次へ進んでいます。

私は何度も見てきました。

品質では勝っているのに、スピードで負ける。

これは中国市場では致命傷です。

一番もったいなかったのは、“売れる時に売らなかったこと”

これを私はずっと思っています。

当時、中国市場では日本保温ボトルの需要が非常に強かった。

「売りたい」
「扱いたい」
「注文したい」

そういう声は本当に多くありました。

でも、その時に止められる。
  •  海外販売は慎重に
  •  ブランド管理が必要
  •  ルートを守る
  •  前例がない
  •  上の承認待ち

現場からすると、こう思っていました。

今なら飛ぶように売れるのに。

でも売らない。

数か月悩んでいる間に、中国側は別ブランドへ切り替えていました。

そして数年後、売ろうとした時には市場が変わっていました。

これは本当によくある話です。

止めた1件の注文は、未来の1000人の顧客だった

中国市場は口コミ市場です。

最初の100人が使う。
その100人がSNSに出す。
友人が真似する。
そこから一気に広がる。

当時止めた1件の注文は、ただの1件ではありません。

未来の1000人の顧客だったかもしれません。

ここを読めなかった企業は多いです。

今の若い中国人は、“日本ブランド”だけでは動かない

昔は、

日本製 = 高品質

これだけで強かった。

今の若い世代は違います。
  •  デザインがいいか
  •  自分っぽいか
  •  SNSで人気か
  •  コスパがいいか
  •  持って気分が上がるか

ブランド名だけでは買いません。

つまり、

昔の看板だけではもう戦えない。

中国市場は、過去の栄光に一番冷たい市場

ここが本質です。

日本では、老舗や伝統は価値になります。

でも中国市場は違います。

昨日人気だったブランドでも、今日弱ければすぐ忘れられる。

逆に、昨日無名でも、今日強ければ一気に伸びる。

厳しいですが、非常にリアルな市場です。

それでも日本ブランドには、まだ勝てる場所がある

私は今でも、日本ブランドには十分な価値があると思っています。
  •  品質への信頼
  •  長く使える安心感
  •  家族向けの安全性
  •  ギフトとしての格

これは簡単には真似できません。

ただし、39元の商品と正面から戦ってはいけない。

そこではなく、
  •  高品質層
  •  子育て家庭
  •  健康意識層
  •  ギフト市場
  •  中高所得層

ここに届けるべきです。

最後に

象印やサーモスが弱くなったのではありません。

多くの日本企業が、中国市場の変化を甘く見たのです。

売れる時に慎重すぎた。
変わる時に遅すぎた。

その結果が、今です。

私はその流れを現場で10年以上見てきました。

同じことは、今、別の商品カテゴリーでも起きています。

中国市場は、昔勝った会社が勝ち続ける市場ではありません。

今、強い会社だけが勝てる市場です。