
ここ数年、日本の小売業・観光業にとって、インバウンド需要は大きな追い風でした。特に中国人観光客の購買力は非常に大きく、ドラッグストア、百貨店、家電量販店、化粧品、日用品、食品など、多くの業種が恩恵を受けてきました。ところが最近、「中国人観光客が以前ほど戻っていない」「団体客が少ない」「客単価が変わった」と感じている企業様も多いのではないでしょうか。現場でもそうした声をよく耳にします。
数字で見ても流れの変化は明確です。日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外国人旅行者数は約3,687万人と高水準まで回復しました。一方で、中国本土からの訪日客は約698万人で最大級の市場ではあるものの、2019年の約959万人までは戻っていません。つまり、中国市場は依然重要ですが、以前の“爆買い時代”と同じ前提で考えるのは危険です。
さらに、中国人旅行者の消費行動も変わっています。以前のような大量購入よりも、SNSで調べた商品を目的買いする傾向が強くなり、体験・飲食・宿泊への支出比率も高まっています。つまり、中国人観光客が減ったというより、買い方が変わったのです。
この変化は、日本の小売業にとって大きな意味があります。以前は店頭に商品を並べていれば売れた商品でも、今は簡単には動きません。特にドラッグストア、免税店、家電量販店など、インバウンド依存度の高かった業態ほど影響を受けやすくなります。一方で、地方食品、体験型店舗、専門性の高い商品を持つ企業は、むしろ新しいチャンスがあります。
そこで今、日本企業が考えるべきなのは、来店を待つだけでなく、自ら中国市場へ売りに行くことです。日本国内で中国人観光客を待つ時代から、中国国内で売上を作る時代へ発想を変える必要があります。これは大企業だけの話ではなく、中小企業でも十分可能です。
実際に、日本の商品が中国市場で成功している例は数多くあります。たとえば、不二家 の棒棒糖(ペコちゃんポップキャンディ)は、中国でも高い認知度があります。日本らしい可愛いデザイン、安心感のあるブランドイメージ、子供向けだけでなく“懐かしさ・かわいさ”という感情価値が受け、中国ECやギフト需要でも人気があります。単なる飴ではなく、日本ブランドのストーリー付き商品として売れている好例です。
また、ROYCE’ の生チョコレート、Calbee の限定スナック、資生堂 のスキンケア商品なども、中国市場では根強い人気があります。これらに共通するのは、価格だけではなく、品質・日本製・安心感・口コミ拡散しやすさです。
中国では現在、商品が売れる流れも変わっています。以前のように代理店へ卸すだけではなく、小紅書(RED)・Douyin・WeChatコミュニティ・越境EC を組み合わせた販売モデルが主流になりつつあります。中国消費者は、「誰が紹介したか」「実際の口コミはどうか」を非常に重視します。つまり、日本で棚に置いて待つより、中国国内で話題化して売る方が伸びやすい時代です。
実際に、ある日本企業様は国内で伸び悩んでいた生活雑貨を、中国向けにパッケージ変更し、小紅書で認知を取り、越境ECで販売したところ、半年で継続受注につながりました。また別の企業様は、訪日客向けに売れていた健康食品を、中国国内コミュニティ販売へ切り替えたことで、来店客数に左右されない売上基盤を作ることができました。
もちろん、中国市場にも課題はあります。競争が激しい、価格比較が早い、スピード感が必要、現地感覚が必要。この4点は間違いなくあります。しかし、それは裏を返せば、市場規模が大きく、売れれば一気に伸びるということでもあります。日本国内人口減少が進む中で、外へ出る選択肢はますます重要になります。
今後の日本小売業のテーマは、国内販売+訪日需要+海外販売の三本柱化だと私は見ています。店頭販売だけに依存する時代は終わりつつあります。商品力のある企業様ほど、中国市場へ出る準備をした方が良いタイミングです。
もし、自社商品を中国で売ってみたい、中国市場向けに何が売れるか知りたい、中国SNSや越境ECの進め方が分からない、信頼できる現地パートナーが欲しい、そのようなお悩みがありましたら、株式会社APTまでお気軽にご相談ください。市場調査から販売チャネル設計、現地販売支援まで、実務ベースでご提案可能です。
中国人観光客を待つだけではなく、日本の商品をこちらから中国へ届ける。これからは、その発想が企業の未来を分けると感じています。
