現場で感じる、日中ビジネス文化のリアルな“ズレ”と乗りこえ方
はじめに
近年、日本と中国の間で越境ECやOEM/ODM取引がますます盛んになる中で、企業担当者の方からよく聞かれるのがこの一言です:
「中国のパートナーと話が噛み合わない気がする…」
「日本流で丁寧に準備したのに、全然通じていなかった…」
これは言葉の問題というより、ビジネスの価値観・意思決定・スピード感の違いが背景にあります。
本記事では、私たちが実際の現場で見てきた「日中ビジネスロジックの違い」を、実例を交えながらご紹介します。
目次
1.「計画」より「変化」へ:中国は“今を動かす力”重視
日本人の思考傾向:
• 事前にしっかり計画を立てる
• 想定通りに進めることを「良い仕事」と考える
• リスクを最小化してからスタートする
中国人の思考傾向:
• 状況を見て臨機応変に動くことを重視
• 「走りながら考える」柔軟性が評価される
• スピードを最優先し、変化に対応する力が強い
現場あるある:
日本企業が半年かけて作った提案書に対し、中国側は「まず小ロットでテストしよう」と即実行に動く。
結果的に中国側の方が先に市場に出してフィードバックを得るスピードが速い。
2.「契約=信頼」か「実績=信頼」か
日本人の傾向:
• 取引開始前に明確な契約・責任範囲・細かな条件を詰める
• 契約書=信頼の土台と考える
• 一度合意した内容を変更しないことを重視
中国人の傾向:
• 契約も大事だが、それ以上に実際に一緒に動いて信用を積み上げることが重要
• 状況が変われば契約内容も柔軟に見直すのが合理的という考え方
• 「まず取引を始めてから信頼を深める」という順序
現場あるある:
日本企業が「契約が結べないと進められない」と交渉している間に、他社が「じゃあまずやってみよう」で先に進んでしまう。
3.「品質基準」の捉え方の違い
日本の考え方:
• 細部まで完成度を求め、「完璧であること」に価値を置く
• 品質基準は事前に明文化し、納期よりも品質優先
中国の考え方:
• コスト・スピード・実用性を重視し、「合格点を超えれば良い」傾向
• フィードバックがあれば次のロットで改善するスタンス
現場あるある:
「日本の品質チェックは厳しすぎる」と中国側が感じ、「中国の対応は大雑把すぎる」と日本側が感じる。
→ どちらも「品質」を大切にしているが、ゴールの定義が異なる。
4.「責任」の取り方にも違いがある
日本の傾向:
• トラブルが起きた場合、まず謝罪し、社内責任を明確化
• 再発防止を重視し、時間をかけて根本対策を行う
中国の傾向:
• 問題が起きた場合、すぐに現場で対応・解決を優先
• 「謝る」よりも「すぐ動く」ことが誠意とされる
現場あるある:
日本側が謝罪や報告に時間をかけている間に、中国側は「早く代替品を送って」「もう解決した話」と次に進んでいる。
5. 長期的視点 vs 短期的判断
日本:
• 「信頼関係を築き、長く付き合っていく」ことを最重視
• 無理な拡大よりも堅実な成長
中国:
• 「今がチャンス」と見ればすぐに投資し、撤退判断も早い
• スピードある成長・スケール感の追求に積極的
現場あるある:
中国のバイヤーは「3ヶ月で売れなければ撤退」と判断、日本側は「1年かけて市場育成を」と考えている。
違いを「摩擦」ではなく「補完」に変えるには?
日本と中国のビジネスの違いは、単に文化的な差ではなく、市場の成長スピード、商習慣、リスクの許容度、成功体験の違いから生まれています。
だからこそ、
• 日本の「丁寧さ・信頼性・完成度」は中国にとって大きな価値
• 中国の「スピード・柔軟性・行動力」は日本にとって大きな学び
この2つが出会うことで、**一方では生まれなかった“新しい可能性”**が開けるのです。